バスターズ
「イングロリアス・バスターズ」を見ました。監督&脚本は金・暴力・SEXを地でいく日本映画オタク、俺たちのクエンティン・タランティーノ。
タランティーノの代表的な映画と言えば何か、と問われると今まで公開された作品全部と答えられるぐらい魅力的な作品しかない。
復讐に燃えるブロンド美女がサニー千葉の剣術指導で日本刀をぶんぶん振り回す「キル・ビル」動画サイトで切り抜かれまくってる「パルプ・フィクション」最高なオープニング「ジャッキー・ブラウン」血と肉、暴力と性、監督らしいフェティッシュが垣間見える会話、大衆娯楽映画を作らせればタランティーノの右に出る人はいないと思う。
「イングロリアス・バスターズ」はWWⅡ真っ只中、ナチスドイツが幅を利かせている時代の話。SS大佐、ナチス専門部隊バスターズに所属するアルド中尉、それと親兄弟をナチスに殺されて復讐に燃えるユダヤ人ショシャナの3人を中心として話が進む群像劇になる。
映画のジャンルはいわゆる戦争映画だけど、差し込まれる登場人物たちのやり取りや劇中に漂う独特な緊張感が戦争映画っぽさを払拭しているのが良かった。雰囲気としては「ヘイトフル・エイト」に近い気がした。
バスターズのまとめ役アルド中尉を演じるのはブラッド・ピット。ブラピはキリッとした役より、こういうチャラけた兄ちゃんみたいな役のほうが好きだな。
ユダヤ人のショシャナとドイツ人フレデリックの関係は落ち着くところに落ち着いたと思う。映画のクライマックスを考えるとロマンスに着地するのはあまりに陳腐だし、さっぱりした終わりで良かった。
後半、ナチスの将校やヒトラーが可燃性フィルムによって燃え盛る映画館に閉じ込められて死ぬ。あくまで「イングロリアス・バスターズ」というフィクションの世界で起きた出来事で、歴史にはそんな事実も噂もない。こんな突拍子もないことが起こるわけがないだろ!と突っ込むのは野暮で場違いだ。虚構の世界で、これからもナチス兵とヒトラーはあの手この手で死んでいく。タランティーノは「こうしてもいい」と言っているようにも思える。歴史の漫画で笑うことはあっても、歴史の教科書で笑い転げることはないしな。