「プリデスティネーション」を見た

イーサン・ホーク主演、監督は吸血鬼SF「デイブレイカー」のスピエリッグ兄弟。

話は「ルーパー」とか「12モンキーズ」のような未来もしくは過去の自分が関わってくるタイムトラベルもの。「ダレン・シャン」を挙げると、本作と「ダレン・シャン」のネタバレになるか? 

「メンインブラック3」とか「インターステラー」もそうだけど、なぜタイムトラベルが絡むとこんなに面白くなるのか。単に自分の好みだから手を叩いて見ていられるのかと思ったけど、世の中のヒット作と謳われるSF作品には煎じ過ぎてもはや味がしない程タイムトラベルは使われている。最近だと「Re:ゼロから始める異世界生活」でも主人公が過去に戻って色々あれするみたいだし、少し前だと「魔法少女まどかマギカ」「シュタインズ・ゲート」もそうだ。古のフィルムを持ち出すと「戦国自衛隊」もその類だ。脳みそを電脳化したり、身体の半分以上が機械で、腕がマシンガンに変形してバスバス銃弾を飛ばしたりするよりも、現実世界への説得力と魅力がタイムトラベルは大きいのかもしれない。

物語の語り手ジェーンが自身の過去について喋る時、バーテンダーとジェーンが煙草の煙をまといながら、グラスの酒を飲んでいるシーンが印象的だった。そこだけ切り取れば、幸先の悪い展開を予言するような薄暗い光景だけど、後半へ続くにつれて明かされるジェーンの素性を考えると、バーテンダーとジェーン、2人が顔を合わせて酒を飲むことの重要さが浮き彫りになる。

デイブレイカー」はエンディングで未来への希望がある演出がされていたけど、本作は物語の終わりでイーサン・ホークの顔が、時間の狂気に飲み込まれているようにも運命への背反とも取れるような表情をしていて、その後の判断と結末を視聴者に委ねている。宿命とか運命というのにピンとこない人間なので、バーテンダーには運命の楔をどうにか引き抜いてほしい。

派手なアクション演出もなければ、社会問題に訴えるようなこともない。静かにとうとうと映画は進んでいく。使える布石は全部使う、誤魔化しのない純粋なSF映画で面白かった。こういう雰囲気の映画もっと増えてほしいな。